
お茶ともコーヒーともお酒とも!福を呼ぶ、干し柿×クリームチーズの「シン・和菓子」
伝統的な和菓子として、干し柿の中に栗きんとんを詰めたものは、比較的よく見られるのですが、「柏屋つちや」さんのこの品は、小ぶりサイズの干し柿の中に、なんとクリームチーズを詰めている!最初に出会った時には驚きましたが、干し柿の甘さとチーズのほのかな塩気が見事にマッチ。西欧文化でも、チーズにドライフルーツを添え、お酒のおつまみとして提供するということはよくあり、洋の東西を問わない相性のよさと言えるでしょう。
このお菓子には砂糖は使っておらず、大垣の養蜂家「種田養蜂場」の「れんげ蜂蜜」をクリームチーズと合わせ、「市田柿」という渋柿を干し柿にしたものに詰めています。
柿の木は長寿であるため、「嘉来(かき)」、即ち“幸せがやってくる縁起の良い木”と言われてきたことになぞらえ、「喜び事(=嬉しい)」が来るようにとの思いで、「うれし」と名付けたそう。
また、原材料である干し柿、蜂蜜、チーズのいずれもが、時間をかけて作られる食材であり、「熟成」を要することから、「熟れし」という意味も込められているとのこと。日本と西洋の伝統食材を掛け合わせ、その菓子にこのような美しい響きの名をつけるとは、何とも粋に感じられます。
「柏屋つちや」のお店があるのは、岐阜県の中でも水の都として知られる大垣の地。店主の槌谷祐哉さんは、1755年創業の老舗和菓子店「つちや」の9代目として生まれ、29歳の若さで社長に就任し、様々な挑戦を続けてきました。私が出会ったのはその頃のことで、2013年に百貨店の「三越日本橋本店」で開催された、老舗和菓子店の若手店主達による催事の場でした。
伝統的な技法を活かしつつ、従来の和菓子の常識や枠にとらわれない素材使いや自由な発想で、心惹かれるお菓子を提案していらした槌谷さん。それ以来、注目してきましたが、より自由なお菓子作りの場を求めて2020年に独立し、この店を立ち上げられたのです。
「柏屋つちや」の店名は、「つちや」が創業当時に掲げていた「柏屋」という屋号と、ご自身の名字を合わせたものだそう。お菓子を考え、作り、販売するまでご自身で手掛け、1人1人のお客様との対話を大切に、丁寧なお菓子作りと接客を続けていらっしゃいます。
「うれし」は、ぱくっと一口でも食べられそうな可愛らしい大きさではあるのですが、3つほどの輪切りにして、深みを帯びた照柿色の中に乳白色のチーズの色が映える断面の色彩も愛でつつ、ゆっくりと味わうのがお勧めです。日本茶にも、紅茶やコーヒーにも、さらにワインや日本酒など、お酒とのマリアージュも楽しめます。
伝統的でかつ新しく、まさに自由な和菓子。それは、槌谷さんの、柔軟でいて凛とした生き方をも思わせ、源流である大垣の地を訪れたくなるに違いありません。








